おかしいな、と思うべき出来事は色々あった。しかし、その時は母がおかしいなんて全く思ってなかった。 母は向かいのマンションを見ながら、「あそこの窓からピンク色の光が漏れ出ている。きっと怪しい家だ」と語っていた。 ダイニングのテーブルのすぐ裏の壁がベリベリに剥がれていて、中の配線が丸見えになっていた。呑気な私はそれを見て、「壁の中ってこんななってるのか」と興味を引かれたものの、そうなった理由については考えもしなかった。盗聴されているという妄想を持っていた母が、調査するためにやったらしい。 朝の通学路で手袋を落としたところ、家から結構離れていた地点なのに、母がすぐ後ろから「はい落としたよ」と手袋を渡してくれた。これはきっと、ずっと後ろから見守ってたのだろう。 などと、思い返すと繋がる出来事なのだが、当時の私は「そんなこともあるか」と徹底して能天気であった。 そんな私でも、さすがにおかしいんじゃな
